「里山資本主義」を読んで

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こんにちは。「はたらくサポート新見」の児谷です。

先日、地方創生にいみカレッジ「鳴滝塾」にて、新見公立大学客員教授に就任した藻谷浩介さんの特別講演が開催されました。その日はどうしても外せない用事が入っていたので、残念ながら私は聴講できませんでしたが、 事前に知り合いの工務店の社長から「勉強になるので是非参加してもらいたいけど、難しいのならせめて著書『里山資本主義』だけでも読んでみて!」と強く勧められていたので、早速購読してみました。

「里山資本主義」とは、お金第一の価値基準で動くアメリカ型の「マネー資本主義」の対極にあり、安心の人的ネットワークと地産地消ベースで構築される地域循環型社会「里山」をつくり、継続させていこうとする考え方です。言い換えれば、「里山」には自然環境や人間関係などの「金銭換算できない価値」と、木材や農作物などの資源を有効活用することによる「金銭換算可能な価値」の両方を見い出すことができ、それらを最大限に生かして、現代の資本主義社会に足りないものを補うサブシステムと位置付けようとするものです。NHK広島取材班との共著により2013年に発行されたこの本には、中国山地のあちこちで始まっている「里山資本主義」のチャレンジが取り上げられています。私自身、何度も訪れたことのある田舎町も多く、その奮闘ぶりをとても身近に受け止めることができました。

一例を挙げますと、新見市の東側に隣接する真庭市の建材メーカー、銘建工業の中島社長は、再生可能エネルギーと言われる森林資源を用い、製材の過程で出る木くずを活用してバイオマス発電を行い、さらに余分なおがくずで木材ペレットという燃料を作り出しています。もっと驚いたのは、鉄筋コンクリートに匹敵する強さで、軽くて耐火性もある加工木材CLTを製造し、高層ビルの建築にも活用しようとしている点。木材が持つ可能性を、余すところなく最大限に引き出そうと様々な挑戦を行い、地域経済を盛り上げています。

また新見市の西側に隣接する広島県庄原市では、「無縁社会」の撲滅を目指し、豊かさを地域内で循環する仕組みを作っており、その取り組みを参考にしようと福祉先進国であるフィンランドからも視察があったということです。そのほか、山口県周防大島や島根県邑南町などの「里山資本主義」の実践も紹介されていて、同じ中国地方の田舎町であるこの岡山県新見市の1市民としても参考になる事例ばかりで、非常に興味深く読ませて頂きました。

「里山資本主義」は、知恵と行動力次第で、田舎でも都市部以上に豊かな暮らしができることを証明しています。それは、生活に必要なものは採ってくるとか、物々交換するとか、育てるとかして、いくらでも調達可能な田舎ならではの恵まれた環境を、最大限活かしていくことを意味します。そこにはご近所同士のコミュニケーションがあり、モノづくりの楽しさがあり、お金には代えられないプライスレスな価値があると理解しました。

「はたらくサポート新見」では、新見市内の企業を中心に求人登録をお願いしていますが、募集要項の給与欄を見ると、確かに都市部に比べてかなり低い数字となっているところも少なくありません。でも、給与だけが豊かさを決めるわけではありません。田舎では家賃や食費など、生活していく上での出費を安く抑えることができますし、例えば朝採れの新鮮野菜を贅沢に頬張って、都会には無い幸福感を味わうこともできます。さらに上述のような「里山資本主義」的な取り組みをプラスできれば、その地域ならではの掛け替えのない豊かさを実現できるようになると思います。特にUターン・Iターンを希望している方は、そのあたりの田舎暮らしの本質的なところもできるだけ理解した上で動かれることをオススメします。よろしければ、まずはこの「里山資本主義」を読んでみてくださいね。オススメの1冊です。

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