本当の「働き方改革」について考える

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こんにちは。「はたらくサポート新見」の児谷です。

「働き方改革」という言葉を耳にする機会が増えてきました。 日本では労働力不足が深刻な社会問題になっており、これを解消するために「働き手を増やし、出生率を上昇させ、労働生産性を向上させる」目的で、政府の重要政策の一つとして掲げられたのが「働き方改革」です。いよいよ今年4月から段階的に施行されることになるため、各企業においても急ピッチで労働環境の整備・改善が進められています。ということで、私も先日、「本当の『働き方改革』を進めるポイント」と題したセミナーとワークショップに参加してきました。講師は組織コンサルタントで日本ファシリテーション協会創始者の堀公俊先生。ワークショップの回し方も流石でした。

セミナーでまずお話されたのは、2019年4月からの制度改正の具体的な中身です。時間外労働に上限規制(原則、月間45時間、年間360時間)が導入されたり、年次有給休暇の年5日以上の取得が義務化されたりしますが、それらがきちんと運用できなかった場合には罰則規定(例:年間5日の有休を取得させなかった企業は、従業員1人当たり最大30万円の罰金)も用意されています。労働者にとっては、ワークライフバランスが改善され、文字通り働きやすい環境が整備されていくわけですから、大いに歓迎されるものと思われます。一方で企業にとっては、前述の通り人材不足が深刻な問題となっているこのタイミングにおいて、一見すると逆行するかのような制度改正に、頭を抱える経営者も少なくないことでしょう。

ここで堀先生が強調されたのは、「働き方改革」の真の目的です。企業は制度改正をピンチと捉えるのではなく、「成長&競争戦略」として取り組むことで、自社の様々な課題を解決できる絶好のチャンスが来たと考えることが重要だというのです。具体的に言うと、「残業が多い」という事実は結果として最後に見えているだけで、その職場の「本当の問題」はもっと前の段階、例えば、スタッフのモチベーション低下やスタッフ間のコミュニケーション不足、さらにはD言葉(私は初耳でしたが、「だって」「でも」「どうせ」などのマイナス言葉を指します)が溢れる職場環境などにあるのかもしれません。このような原因を究明・分析し、その1つ1つにきちんと対策を講じていくことで、結果的に残業時間の削減に繋がっていくような事例はよくあると言います。問題解決で一番難しいのは「本当の問題」を見つけることで、これさえできれば、意外と簡単に解決に漕ぎ着けることができるということです。

そして、働き方改革の取り組みにおいて最も大切なのは、各社のミッション(何のために)・ビジョン(何を目指して)・バリュー(何を大切にして)といった理念であり、それを有名な「3人の石工」の話に例えて説明されました。教会の建築現場で、ある旅人が石工たちに「何をしているのか?」と聞きます。1人目は「レンガを積んでいる」と答えます。2人目は「お金を稼いでいる」と答えます。3人目は「みんなの心の拠り所を作っている」と答えます。仕事をする目的(=理念)は、目の前の業務をこなすことだけでも、家族を養うことだけでもありません。新しい価値を生み出し自らの成長に繋げることができれば、その意義は遥かに大きなものになるのです。「働き方改革」においても、こういった本質の部分を、経営者だけでなく従業員全員に理解・浸透させながらを実行していくことで、その会社が抱える「本当の問題」に対する「本当の改革」に繋げていきたいものです。

ワークショップでは、数人のグループに分かれて、各社の課題を共有したり、その解決策を話し合ったりしました。いろいろな意見をお聞きしながらあらためて感じたのは、堀先生も言われていた「生産性は従業員のモチベーションに比例する」ということです。日本人の1時間あたりの労働生産性はアメリカの2/3程度で、先進7ヵ国中最低の状況が続いています。これは、終身雇用や年功序列といった日本企業の古くからの経営体質に影響を受けているものと思われます。極端な言い方をすれば、「頑張っても頑張らなくても、報酬や待遇が変わらない」旧態依然としたシステムであれば、社員のモチベーションが上がらなくなるのも当然のことと言えます。また、今回の参加されていた多くの会社が製造業でしたが、製造ラインでは毎日同じ作業の繰り返しで、モチベーションを保つことが厳しく、なかなか生産性が上がらないということでした。

「働き方改革」の狙いでもある、「労働者個々の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会の実現」によりワークライフバランスを充実させることはもちろん重要ですが、もう少し大きな視点で考えるなら、人事評価制度の見直し、社内コミュニケーションの強化、経営ビジョンの見える化、チャレンジできる社内風土づくり、管理職を含めた人材育成の強化など、総合的な取り組みにより社員のモチベーションを上げる仕組みづくりを行うことが極めて重要であると考えます。CS(顧客満足)を追求する前に、ES(従業員満足)を追求することが絶対的に必要だと思うのです。

「はたらくサポート新見」では、今回の「働き方改革」の本当の目的をしっかりと理解した上で、求人企業様に対しても必要なアドバイスをさせて頂きたいと思っています。こういった改革に積極的に取り組んでいかれる企業様であれば、求職者の皆様も将来を見据えて安心して働けるはずです。「働き方改革」をきっかけにして、新見市にもそのような企業がたくさん増えていくことを期待し、応援していきたいと思います。

 

 

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