「地域響生社会」の実現に向けた勉強会(鳴滝塾)に参加してきました。

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こんにちは。「はたらくサポート新見」の児谷です。

昨日、別所アウトドアスポーツセンターで開催された「地方創生にいみカレッジ『鳴滝塾』」を聴講してきました。今回は、以前このブログでもご紹介した「里山資本主義」の著者である藻谷浩介さんのセミナーが聞けるということで参加しましたが、他にも様々な企画が用意されていて、楽しみながら勉強をさせていただきました!

タイトルは「共に生きるだけではなく響き合って生きる『地域響生』社会を創ろう!」。「鳴滝塾」と広島県庄原市で里山の再生に取り組んでいる「逆手塾」の共催で行われた〈まちづくりシンポジウム〉です。地域のために実践を通じて活躍されている皆さんが勢揃いしたかのようで、なかなか経験できない時間を過ごさせていただきましたが、特に心に残っている部分を抜粋してご紹介したいと思います。


まず第一部は、「新見版『里山資本主義』」のパネルディスカッションでした。パネラーは、千屋牛の第一人者で「辰五郎塾」塾長も務める峠田一也氏、「新見荘たたら学習実行委員会」委員長でたたら製鉄を20回も再現させている橋本正純氏、ワインの6次産業化により地域の魅力づくりに挑戦している「domaine tetta」の高橋竜太氏の3人。

峠田さんと高橋さんには、「にいみいろ」の取材などを通してお話させていただいたことがあり、ある程度はどのような取り組みをされているのか理解しているつもりですが、橋本さんは初めてで、大変興味深くお話をお聞きしました。

京都・東寺の荘園だった新見荘(現新見市)で、500年以上も前の中世に盛んだった「たたら製鉄」。橋本さんを中心とする「新見荘たたら学習実行委員会」では、この日本古来の製鉄法を再現するイベントを、1,999年から毎年開催しています。
地域の素晴らしい伝統を守り、後世に受け継いでいこうとする取り組みですが、実際に継続していくのは、到底簡単にはできないご苦労を伴う素晴らしい取り組みです。ただ、続けることだけが目的になっていて良いのか?周囲からも発展的な取り組みを期待する声が挙がる中で、今後について模索する必要性も感じておられるようでした。
どなたかが、例えば千屋牛やtettaワインなどの調理や食事に使用する包丁・ナイフ・フォークなどには、「たたら製鉄」の鉄製品を使うとかしてみては?と言われていましたが、確かにそれも一理。新見エリアの特産品同士がコラボレーションしながら、それぞれの価値を相乗的に高めていくブランディングなどは、非常に良いアイデアではないかと思っています。

いずれにしても、「たたら製鉄」については、今まで私自身、ほとんど知識が無かったのですが、もう少しその魅力について勉強してみたいと思いましたし、できれば秋の再現イベントにも参加できればと考えています。何かを盛り上げるためには、まずは知ること、そして興味を持つことが大事だと思いますし、もっともっと地元の皆さんが、地元にある素晴らしいものに気づき、そして興味を持つようになる働き掛けの大切さを実感しました。私が担当している「にいみいろ」もそうですが、地域の魅力をしっかり発信し合える土壌を作っていきたいと思います。

続いて、日本総研主席研究員であり、新見公立大学客員教授でもある、待ちに待った藻谷さんの講演。「人が減ったら増えることは何か?」という問い掛けから始まりました。選択肢は以下の3つ。皆さんも考えてみてください(答えは後ほど)。
①自殺・殺人
②飲食店
③輸出

全国の出生数は現在、戦後のベビーブーム期の1/3程度になっており、平成の30年間でもずっと減り続けました。地域別にみると、田舎が減っていて、都会(主に東京周辺)が増えており、田舎ばかりが将来を悲観する傾向へと繋がっています。
ところが、東京が繁栄していて田舎が廃れているのは思い込みである、と藻谷さんは言い切ります。例えば空き家は岡山県の13万戸に対して東京都は81万戸で、人口に対する割合で考えるとほぼ同じ。東京もこれから急速に人口が減り続け、マンションは空き部屋だらけとなり、家が土に返ることも容易ではないので、田舎以上に悲惨な状況が待っていると言うのです。

さて、先ほどの問い掛けに対する答えは「③輸出」でした。日本の輸出額は平成30年間で37兆円から81兆円に大きく伸びているそうです。輸入額を差し引いた貿易利益は約19兆円でドイツに次いで世界第2位。その内、アメリカから12兆円、中国から6兆円を稼いでいるということです。
日本で人口が減っきた分を、海外への売り込み強化により補填し、さらに大きくプラスに持ち込んでいるようですが、ポイントとなるのは日本の技術力。世界のプロは技術力の高い日本製品を好んで使ってくれるため、このような結果となっているのです。そう考えれば、先述の千屋牛やtettaワインも、こだわりの品質、高い競争力を武器に、日本だけでなく世界を舞台に商売を行うことにより、新見エリアに外貨をもたらしてくれることも可能になってきます。
ちなみに①自殺・殺人 及び ②飲食店は、全体人口に比例する形で減少しているようです。

そして後半、「新見エリアの人口はこのまま減り続けるのか?」というテーマにおいては、「増える!」と力強く持論(?)を展開。西粟倉村や新庄村など、岡山県内にも子供が増えてきている地域が出てきており、まずはネガティブな風潮に惑わされないことが大事であると強調されました。都会にはない心豊かな生活を過ごせたり、食糧やエネルギーを地域内で賄えたりといった田舎ならではの魅力にさらに磨きをかけ、地域内外に発信していくことで、若者の転出を減らしたり、移住者を増やしたりすることも可能ではないかと、私自身も前向きな気持ちになれました。

ティータイムやミニコンサートを挟んでの第二部は、「打てば響く(助けて!と言える)社会づくり」のパネルディスカッションでした。パネラーは、新見公立大学健康保育学科特任教授の髙月教惠氏、同じく看護学科教授の栗本一美氏、介護事業所代表の道繁由香理氏、特別養護老人ホーム施設長の吉田直記氏、助産師で「いのち咲かせたい」代表の山本文子氏の5人。

特に新見公立大学の3学科(健康保育・地域福祉・看護)の取り組みにも繋がる地域での活動について、それぞれの立場から貴重なお話がありました。
新見公立大学は、今年度より完全4年制化に移行し、新見市が誇る全国有数の公立大学として、ますます新見市民の期待を受けています。そんな中で、いつも公文学長が口にされる「課題先進地域にある地の利を活かした、持続可能な地域の未来を拓く『人に優しい地域共生社会』の実現」に向けた取り組みについて、地域との連携により着実に進んでいるように感じました。
例えば、大学の卒業生が地域に残り、新しいスタイルの福祉事業を立ち上げた事例紹介もありました。このような挑戦がまた次の世代の若者の刺激にもなり、課題先進地域だからこそできるチャレンジにより、問題解決への様々な取り組みが活発に行われていくであろう新見市の将来に、大きな希望を感じました。

その中で、最も心に残ったのが山本さんのお話です。これだけエネルギッシュな75歳も、そうはいないと思いますが、お話も非常に面白く、また説得力があり、非常に魅力的な女性でした。

山本さんは何千人もの赤ちゃんを取り上げた助産師として、全国を飛び回って「命の大切さ」を伝える講演会活動を展開しておられます。今回は特に性教育の重要性について触れられ、「どうして自分たちが生まれてきたのか?」「どれだけ自分たちの命は尊いものなのか?」子供のうちにしっかりと教育をする必要性を訴えられていました。

昨今、いじめや虐待、さらに殺人や自殺など、命を粗末に扱う事件や事故が後を絶ちません。これらの原因の根本に、命の大切さが十分に理解されていない状況があるのではないか、と山本さんは言います。相手を思いやる心や相手の痛みがわかる感性、そして自分自身を褒めたり慰めたりする心のゆとりなど、すべて命を大事にすることに繋がっていきます。
私もまず、山本さん自身の体験をもとにした著書「いのち咲かせたい」を読んで勉強してみたいと思っています。

また、山本さんは出産・子育て支援・高齢者支援を3本柱とした、小規模多機能型福祉施設の運営もされています。赤ちゃんの泣き声が聞こえ、子供からお年寄りまでが一緒に暮らす、温かい家庭のような空間づくりを目指しているということです。もちろん山本さんの信念や経験則の中で、人間が最も幸せを感じる場所をイメージされているのだと思います。

やはり、一昔前のように、子供からお年寄りまで、1つ屋根の下に3~4世代の家族が同居するような暮らしこそ、人間らしい生き方ではないか?気づいていないかもしれないけれど、本当はみんな、そんな生活を望んでいるのではないか?という感じがしました。
別の方からも、住み慣れた地域で自分たちらしく余生を送ろうと頑張っている老夫婦と接しているうちに、便利さだけが豊かさではなく、もっと大事な心の豊かさについて気づかされた、というお話がありましたが、まさに人間にとって必要なもの・大事なことは何なのか、心が豊かな状態であるとはどういうことか、あらためて考えさせられました。

藻谷さんも、年老いた両親に対して、「簡単に施設に入ることを決めないよう話をしてみたい。」と言われていましたが、住み慣れた家と家族の協力、そしてご近所と助け合いができる環境を再構築していくことも、この田舎を都会にはない絶対的な魅力のある場所にしていくための、大きな武器になるのではないか、と感じているところです。

私はここで退席しましたが、この後も千屋牛のバーベキューや地酒などを囲みながらの夕食交歓会があり、また本日も鳴滝の散策など、お昼過ぎまで充実のイベントが続いたようです。このような機会が身近にあるのは、本当に素晴らしいことだと、この環境に心より感謝しています。

最後に、今回のイベントは「逆手塾」創設者で、藻谷さんの著書「里山資本主義」にも登場している和田芳治さんの追悼記念も兼ねていました。3ヶ月前に亡くなられたということで、今回のイベントも和田さんが中心となって企画されていたようです。公文学長がお話の中で、和田さんを思い出して目頭を熱くされる場面もありましたが、「逆手塾」の皆さんはもちろん、里山再生の取り組みをお手本にしていたであろう全国の多くの方々や、今回の参加者の皆さんにとっても、本当に悲しい出来事だったに違いありません。

でも、こうやって次代を担うメンバーがどんどん育ち、さらにその取り組みを発展させようとしている姿には、本当に心強いものがありました。そこには「過疎を逆手にとる!」という基本理念がすっかり浸透し、一致団結してチャレンジしようとする「逆手塾」の皆さんの心意気を強く感じることができました。
公文学長と共に、今回中心となってイベントを進行されていた、「逆手塾」新会長の熊原さんにも、事務局長の和田さん(ご子息)にも、今後の益々のご活躍をお祈りしたいと思います。また、ご近所さんということもあり、新見エリアとしても、引き続き様々な情報・ノウハウを共有させていただきながら、この中山間地域を一緒に盛り上げていくしかありません。私も微力ながらできることを考えて行動したいと思います。

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